10日ほど前の話ですが、世界で最も物価の高い都市という調査で、ついに東京が1位から転落、オスロが王座(?)についたというニュースが流れましたね。今日はこの調査について一言。
オスロの方が東京より物価高というこの結果については激しく同意です。
それは、僕は去年の4月と6月にオスロにそれぞれ1週間以上出張に行って、身にしみたからです。僕はあるマニアックな国際会議の事務局をやっていて、その会議をホストしてくれる国に会議の下準備と本番と2回出張することになっているのです。去年はそれがオスロ。ちなみに一昨年はスウェーデンのヨーテボリ(Göteburg)でした。オスロ好きな方、オスロ在住の方には申し訳ないのですが、僕にとってオスロは実は極めて印象が薄い街で、ヨーテボリの方が余程強く印象に残っています。
王宮。普通豪華絢爛になっているはずが、愛想も素っ気もない。前庭がだだっ広いテニスのクレーコートみたいな感じ。花くらい植えてもいいんじゃないだろうか。
街中の一番の目抜き通り。この道をずーっと行くと王宮に出る。賑わってはいるが、おもしろくなかった。右の写真は王宮側から見たところ。
市庁舎。港の前にある。ノーベル平和賞の授与式が行われるところ。
街中の様子。夏はさすがに日が長い。というか長すぎる。夜10時を過ぎても余裕で明るい。
ちょっと郊外にあるスキージャンプ場。冬季オリンピックで使われたモノ。
さて、観光案内はおしまいにして、オスロの物価。コカコーラ500ccのペットボトル1本、約400円。マクドナルドのなんとかセット、約1000円。ポップコーン1袋300円強。ホテルもバカ高い。一体何事が起きているのかと思いました。出張代からアシが出まくり。同行した外国人スタッフは「東京ってのは世界一物価が高いらしい(要は去年までのこの調査の知識ね)けど、オスロよりも高いってことか?」と恐怖におののいていました。もうこの時、東京がオスロより物価高なわけがないと確信しましたね。ヨーテボリも高かったですが、オスロの比ではないです。
ちなみに、コカコーラの値段ってのは、各国の物価を比べる上で実は重要な指標なんですよ。あんなの、原材料は数円で、それに輸送費などの経費を上乗せして、後は各国の物価を勘案してよいしょっと値段を決めるわけですから。
まあ、そんなことで、オスロは物価が高いなあとは思うのですが、でもね、この調査ってどれだけの意味があるんだろう?調査をやっているのはイギリスの研究所らしいですが、こいつらは一体この調査で何を言わんとしているのか皆目わからんのです。
そもそも、物価が高いからといってそれがどういう意味を持つのかが不明なんです。物価が高いという言葉からはものすごくネガティブな感じしか伝わらないのですが、物価は高いけど便利で安全な都市と、物価は安いけど不便で危険な都市は一体どっちがいいのか、という問いかけにこの調査は何も答えていないのです。人間は物価だけで生きているわけではないのですから。
違和感を覚える他の理由は、この調査はそれぞれの都市の事情を織り込んでいないのです。例えば日本は地震国です。建物を建てる場合は姉歯建築士以外の人に頼むと耐震設計・耐震建設という余計なコストがかかるわけです。こういうのを無視してまったく同列に並べたら、日本の住居コストが高くなるのは当たり前。重度の心臓病の患者とアフリカのマラソン選手を競争させたらどちらが早いかと言っているようなもの。それを偉そうに住居費が高いと言っても詮無きこと。確かに固定資産の値段の高さは企業の投資行動に影響を与えるでしょう。でも、それ以外にも、国民の教育水準とか治安の善し悪し、インフラの整備度合いなんかも重要な要素のハズ。そいつら全体を判断しないと意味がないと思うのですが、この調査はそれらの中のものすごい一部分を調査しているに過ぎないんですよね。それが全世界に波及していく。なんか不健全だなあ、と思ってしまいます。
あと、この調査、「各都市で外国人が暮らす場合の生活費を指数化して比べた」とのことなのですが、そもそもここがわからない。外国人って、いったい誰?例えば日本では少なくともうどんは安いですわな。僕なんか忙しい時は富士そばの200円のうどんを毎日食べてましたわ。ってことは、東南アジア人や中国人のように麺類をよく食べる外国人ならば、安いうどんをたくさん食べれば食費は安いはず。ウィーンのうどんは安いのか?日本の5倍はします。うどん好きな人間が住むにはウィーンより日本の方がいいはずだぞ。それに一般的な食事でもウィーンの方が東京より全然高いですよ。一事が万事こんな感じ。いったいどんな趣向を持つどんな外国人がどんな生活をすることを想定しているのか、まったくわからない。住居費だって、ウィーンのアパート代は東京よりも絶対に高いです。ホテル代も同じです。でも土地を買うとなるとたぶん東京の方が絶対に高いでしょう。暮らすってのは、不動産を買って住むのか借りて住むのかで結果は全然違うはず。
このあたりをはっきりさせないままに中途半端な調査をやって勝手に結果を発表をしやがって、結果として「東京は物価が高いから旅行に行くのはやめよう」なんてことになったら損害賠償請求ものだとおもうのですが、どんなもんでしょう?
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ふむふむ。
返信削除おっしゃるとおりです。
あちゃあ。なんでおいらこんなことに熱弁ふるってたんだろ?
返信削除夜中に文章を作るとろくなことにならないっすね。
はじめまして、まさるです。
返信削除大変興味深い内容で、楽しませていただきました。
本当におっしゃるとおりだと思います。
だいたい、その調査自身が曖昧で、何が言いたいのかよくわからん上に、基準がはっきりしない。東京は物価が高いですが(何もかも高いということは決してないですが)、必要な物がすぐ手に入り、交通機関も充実している。一方、他の国で物価が安くても手に入らないものは、オンラインで注文、送料やらなんやらがかかって、結局は高くなるっていうんじゃあ、元も子もありませんよね。電気製品が壊れやすいとかもあるかもしれないし。
例えばアイスランドでは、野菜は日本の4、5倍の値段がし、消費税も20%を超えるという驚異な価格なのに対し、医療福祉制度が整っているため、医療費がかからない。など、それぞれの国にはそれぞれの事情があるものです。物価が高いというだけで、「住みよいか否か」云々は問えないと、私も思います。同感です。
今回がコメント初めてですが、実はしょっちゅう覗いてました。面白いブログだと思います。がんばって続けてください。お願いしますね。
まさるさん、初めまして。
返信削除いやあ、御支持いただき、ありがとうございます。こういう御意見をいただくと、「あちゃぁ」感が減少していきます(笑)。翌朝冷静になって、よっぽど削除しようと思ったくらいですから。
まあ、この調査、確かにある部分についてある程度の事実を示しているのかもしれないのですが、その薄い事実を基に日本全体についてネガティブな印象を全世界に与えていることに憂慮しています。いろんな国の人間に聞いても、大抵この調査のことは知っていますし、わざわざ物価の高い国に遊びに行こうとは思わないですよね。
観光(特に歴史的建造物なんかの観光)は、新規設備投資がほとんど不要なくせに広い分野に利益を与える貴重な産業ですから、こんな調査のおかげで観光客を逃しているとしたら非常に腹立たしいわけです。
まさるさんはカリフォルニアですか。こちらに比べると暖かいんでしょうね。いいなぁ。
またコメントをお待ちしています。どんな些細なことでもお気軽に書き込んでくださいまし。引き続き御愛顧よろしくお願いいたします。
こんにちわ!!
返信削除本当に物価だけでいろいろ言われて日本に遊びに来る人が少なくなったらかなり寒いものがあります。
いろんなとこから切り込んで、発表してほしいですよね。
コーラが400円っ!?飲めない。。。
ゆわぐいさん。夜の記事作成、支持します(笑)どんどん熱く語ってください!!
ま、ほどほどに(笑)
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