気品あふれる大人の男としては我が家ではトップクラスの実力を誇る私であるが、夜になり、妻子が寝静まった頃、密かなる愉しみに我が身を忘れることがある。
それは、ポップコーンを食べること。しかも、子供の食べるような既製品の冷たいものではなく、熱いポップコーンを熱い中国茶とともに食する、これ以上の大人の男の愉しみはないのではないか。
元来、私はポップコーンが好きであり、その度合いたるや、我が家では3本の指に入るほどであったが、ウィーンに来て、それと運命的な出会いをしてしまったのだ。それは、電子レンジで作るポップコーンなのだ!
それを袋から出す。とぼけた平べったい物体のように見えるが、侮ってはいけない。この中にはおそらくバター、各種調味料とともに出番を待つトウモロコシ君が多数存在しているであろうからだ。
電子レンジに入れ、タイマーを3分半ちょっとにセットする。これは長い経験及び様々な試行錯誤により培われた職人としての研ぎ澄まされたカンによるものであり、その日の気象条件などによって若干の調整が加えられることは言うに及ばない。緊張を押さえつけ、決然とスイッチをONにする。すると日本では聞いたことさえなかったがこっちではそれなりに有名じゃないかと思われるZANUSSI社製電子レンジのターンテーブルが軽やかに回転し始めると同時に、マグネトロンからはマイクロ波(電子ではないことに要注意だ!)が止めどなく放出される。その途端!
きゃーははは!
エネルギーを得たトウモロコシが急激に目覚め、躍動する。一方、これまでトウモロコシをまるで庇護するかのように身を固めていたバター、各種調味料も我が世を謳歌し始めるとともに、トウモロコシとの関係が新たな段階に突入したことを認識し、両者は恥じらうこともなく渾然一体となって外部に向かって膨張を開始する。
胸が張り裂けそうなどという甘っちょろい比喩どころではないトウモロコシ君達の感情の高まりは一気に極限状態に達し、ぽんという断末魔の叫びとともに現実に破裂するに至る。その刹那、トウモロコシ君達の脳裏をよぎるは過去への郷愁かはたまた彼岸への憧れか。
ぽんぽこぽんぽこ若干間抜けな断末魔の叫びが終焉を迎えると同時に、ZANUSSIスーパー電子レンジからはチンという中年男性が最も嫌悪する音がなり、マイクロウェーブの放出も止まる。結果、当初の世を忍ぶ仮の平べったい姿は影を潜め、その実像たる極限状態まで膨張した雄々しい姿を見せつけることとなる。
この中には自らの殻を打ち破ることにより超高温状態となったポップコーン(旧姓:トウモロコシ君)が臨界状態に至るまで充填されており、極めて危険な存在と言える。俺に触れたらヤケドするぜ、往年の日活スターの再臨か。
ということで、あとはヤケドの危険を冒しても熱いうちに食うが吉!既製品では味わえないおいしさがそこにある。
とここまで書いてネットを検索したら、最近は日本でも電子レンジで作るポップコーン、あるんですね。あれー、少なくとも僕がこっちに来る2年前はこんなのなかったよなぁ。せっかくヨーロッパネタだと思ったのにぃ。こんなに書いて損したじゃん!いいや、投稿しちゃえ。でも当時は変なフライパン型の奴を火にかけるのがせいぜいで、あれがすぐ焦げるし、おいしくなかったんだよなー。
うまそうっ!!これとセットに中国茶ですか?
返信削除渋いですなぁ~・・
ヤフーに登録してもらえるように手続きしました!!
ありがとうございました!!
MEGUさん、どーも。
返信削除そう、ポップコーンと中国茶。これがなかなか合うんだ!コーラと合わせると軽薄すぎます。やはり大人の男は中国茶ですね。